森林と太陽光発電
概要
最近増えている太陽光発電は、二酸化炭素排出低減効果があると言われています。一方、森林は二酸化炭素を吸収します。森林を切り拓いて太陽光発電設備を作った場合、二酸化炭素は減るのか増えるのか?簡単な計算を行なってみました。
1 はじめに
最近太陽光発電が目立ってきたような気がします。特にゴルフ場跡地が太陽光発電に変わっているところが多いような気がします。
私の知り合いで森林を相続した人がいるのですが、最近太陽光発電の会社から連絡があったということです。おそらく森林を買ってか借りてかはわかりませんが、「太陽光発電の設備をつくりませんかか?」という話であろうと思います。
ところで、二酸化炭素の排出削減が叫ばれる今日この頃において、太陽光発電は、化石燃料による発電に比べて、二酸化炭素排出量が小さいとよく言われます。
確かに一度設備をつくってしまえば、太陽光発電は二酸化炭素を排出しないようです。
しかし、木が生い茂っている山の木を伐採して太陽光発電にした場合は、どちらが二酸化炭素排出量削減に貢献するのか疑問になりました。
そこで、同じ面積当たりで森林の二酸化炭素吸収量と太陽光発電の二酸化炭素低低減量を比べてみることにしました。
2 森林の二酸化炭素吸収量
森林1ヘクタールあたりの二酸化炭素吸収量を、林野庁のウェブサイトから引用します。
スギの36~40年生の人工林がこれまでに吸収してきた量と1年間に吸収する量
樹木が吸収し蓄積する二酸化炭素の量は一本一本異なっています。例えば、適切に手入れされている36~40年生の スギ人工林は1ヘクタール当たり約302トンの二酸化炭素(炭素量に換算すると約82トン)注1を蓄えていると推定されます。
また、この36~40年生のスギ人工林1ヘクタールが1年間に吸収する二酸化炭素の量は、約8.8トン(炭素量に換算すると約2.4トン)と推定されます。
林野庁ウェブサイトより
これにより、木の種類は違っても、森林1haあたりの一年間のCO2吸収量は、概ね8.8トン=8,800kg程度であると考えられます。
3 太陽光発電の二酸化炭素低減量
3-1 太陽光発電の二酸化炭素低減量
太陽光発電の二酸化炭素低減量を産総研太陽光発電技術より引用します。
このサイトによれば、二酸化炭素発生量は、
- 化石燃料火力発電全体の平均(石油、石炭、天然ガスなど)690g/kWh
- 太陽光発電の平均 17~48g/kWh
ということです。
ここで、太陽光発電の二酸化炭素排出は、初期設置時とメインテナンス時にのみ発生し、通常使用時は発生しないようです。
今回は、太陽光発電の二酸化炭素排出量を30g/kWhとして計算を進めます。
そうすると、化石燃料発電の二酸化炭素排出量690g/kWhと太陽光発電の二酸化炭素排出量30g/kWhの差である、690-30=660g/kWhが太陽光発電による二酸化炭素排出の低減量と言えます。
3-2 太陽光発電の単位面積当たり発電量
太陽光発電の単位面積当たり発電量を、太陽光発電総合情報のウェブサイトから引用します。
これによれば、3000坪=1万平方メートル=1ヘクタールあたりのは電力は1000kWであり、年間発電量は1140000kWhということです。
3-3 1ヘクタールあたりの二酸化炭素排出低減量
単位電力あたりの二酸化炭素排出低減量である660g/kWhと1ヘクタールあたりの発電量である 1,140,000kWh を乗算することにより、1ヘクタールあたりの二酸化炭素排出低減量を計算することができます。
結果は、
600(g/kWh)×1,140,000(kWh)=752,400,000g=7,524,000kg
となりました。
4 森林の二酸化炭素吸収量と太陽光発電の二酸化炭素排出低減量の比較
ここまでの計算結果によれば、
1ヘクタールの面積×1年間で、
森林による二酸化炭素吸収量は8,800kg
太陽光発電の二酸化炭素排出低減量は7,524,000kg
となって、森林を伐採して太陽光発電設備を造った方が二酸化炭素排出低減に効果があるという計算結果となりました。
5 おわりに
今回は森林と太陽光発電の二酸化炭素排出低減だけに着目して、どちらが効果があるかを計算してみました。
実際には、他にも着目するべき観点がたくさんあると思います。これらについては、機会を見て考えてみたいと思います。